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妖怪・水木しげる作品への並大抵ではない造詣と愛着を持つ、
小説家の京極夏彦さんならではの、他では読めないトークで鬼太郎の魅力に迫ります。
全二回でお送りするこの特別企画の第一回目は、このシリーズの魅力と、
大ヒットがもたらした大きな影響について、お話し頂きました。
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僕は、小学校にあがるか上がらないかぐらいのとても幼い時分に第一期シリーズを観た世代です。もちろんその頃から水木先生の原作漫画に触れていて、やがて虜になり、すっかり嵌まった頃に第二期のカラー版が始まって、そちらも大変楽しみました。小学校生活は水木先生と共に過ごしたわけです。
この第三期が始まったときは社会人になっていました。広告代理店に勤めていた時期です。最初に情報が公開されたときは「まさか」という感じでしたね。「鬼太郎? いま鬼太郎やるの? えー」と、いう感じでした。
もちろん鬼太郎を放映していない間も水木先生はずっと活躍されていて、水木ブームも衰えることなくちゃんと継続していたし、妖怪図鑑なんかは随時出ていて、その頃も「妖怪」は静かに盛り上がってはいたんですけど、アニメの鬼太郎企画の方は何度か出たり引っ込んだりしていたし、復活決定は唐突な感じでした。
ファンとしては心配があったんですね。はたして僕らの「あの」鬼太郎は今の子供にウケるのか……。
聞けば前の作品を引き継ぐのではなく、「仕切り直し」だという。こりゃ一体どうなるんだろう、と。
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ところがそれは杞憂に終って、第三期のリニュウアルはとても見事なものだったんです。
旧作の鬼太郎が物語性重視の作り方だったのに対し、第三期は「ゲゲゲの鬼太郎」をキャラクターマンガとして捉え直すという戦略だったわけですね。
第一期というのは、まず「妖怪」そのものが認知されていない時代に放映されたものでしたし、第二期は第一期で築いたものを継承する形で作られています。 発展・定着を図った第二期は特に物語性重視の傾向が顕著です。第二期では放映時点での原作が尽きてしまったため、鬼太郎以外の水木作品、青年誌なんかに発表された短編なんかを原作に採って作られた作品も多いんですが、セレクトの基準はあくまで物語にあったわけです。それらはもちろん傑作なんですけど。
反面、旧作ではレギュラー以外のキャラはそれほど重視されていませんでした。鬼太郎、目玉おやじ、ねずみ男以外は、味方の連中も「キャラ立ち」していません。第二期ではネコ娘が参加しますが、あくまでキャラクターシフトを考慮したレギュラーの補充でしかなく、妖怪の設定も敵味方共にはっきりしていない。たとえば、二期には「あかなめ」が二種類出てきます。マンモスフラワーを操る奴と、それからホントに巨大化しちゃう怪物みたいな奴と。これはまったく別のキャラクター。一話完結だし、まるで違うお話だから構わないんですが、シリーズ構成上キャラクターに対する注目度が低かったことは確かです。やはり物語が重視されてたんです。
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| 第2シリーズ29回放送「あかなめ」では、ゴミの山から生まれた巨大妖怪として描かれている。 同8回放送の「マンモスフラワー」では姿形も全く異なる。 |
しかし、第三期の鬼太郎はそれぞれの「妖怪」のキャラクター性を見失わないように、かなり注意して作られていました。そこが何よりも旧シリーズと違うところなんですね。
出てくる妖怪一体一体がキャラクターをきちんと持っていて、それがシリーズ全体を通して守られている。一回きりのゲストキャラじゃないんです。原作漫画の中では描かれていない妖怪の属性、出自だとか伝承だとか性質なんかも、鬼太郎を放映していなかった時期に水木先生が培ってきた成果をきちんと反映する格好で作られている。水木先生の妖怪図鑑系の情報を採ったわけですね。鬼太郎以外の作品を原作に採用する際も、妖怪のキャラ先行で物語が再構成されている。
キャラが再登場する場合も、きちんと前のストーリーを引き継いだ形で出て来ます。 たとえば半魚人なんかは第二期にも登場しますが、これは一回きり。人間の生活にあこがれて、原作の『かまぼこ』通り手術で人間になっちゃって終り。第三期の半魚人も同じく人間になっちゃうんですが(第20話「半魚人の恋」)、その動機は「強い結婚願望」になってます。20話ラストで半魚人は「妖怪に戻りたい」と叫ぶわけですが、これがちゃんと妖怪に戻って、第100話(「鬼巫女の鬼太郎抹殺作戦」)で再登場します。しかもお嫁さんを見つけてる(笑)。100話の原作にあたる『鬼道衆』に半魚人は登場しませんが、人魚の伴侶として最適のキャラとして抜擢されたのでしょう。妖怪の属性とキャラの性格を重視したキャスティングなんですね。
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| 第20話『半魚人の恋』でインチキ結婚相談所のねずみ男を頼る半魚人。 |
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| 第100話『鬼巫女の鬼太郎抹殺作戦』で人魚と結婚する半魚人。一転して幸せそう。 |
現在、妖怪というのはほとんどがキャラクターとして認知されています。そういう意味では、一期二期よりもこの第三期が、より"妖怪度"の高い作品に仕上がっていることは間違いありません。実は第三期は妖怪を大事にした作品なんです。
そのへんは大変な魅力になってますよね。一話一話のドラマ的な完結性を求めた旧シリーズと比べるとわかりますが、連続ドラマとしての面白さは第三期のほうが遙かに高いですね。第三期は「旧作にくらべてミーハーな作りじゃないか」「マニア度が低いんじゃないか」という意見を耳にすることもあるんですけど、僕にいわせればそんなことはなくて、よりマニア的に楽しむこともできる作品なんだと思います。
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